DUNLOP:世界初の高精度計測技術による電池用「硫黄」の可視化に成功 ~電池の開発およびタイヤの性能持続技術の進化を加速~

住友ゴム工業は、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター 高橋幸生教授、理化学研究所、高輝度光科学研究センター 為則雄祐室長らと共同で、大型放射光施設SPring-8を活用して、物質の構造と化学結合状態をナノレベルで計測可能な技術(テンダーX線ナノスコープ)を世界で初めて確立し、リチウム硫黄電池材料に用いる硫黄化合物の可視化に成功した。この技術を応用することで、現在開発を進めているリチウム硫黄電池での反応・劣化メカニズム解明による性能向上が期待できる。さらに、将来はタイヤ研究にも応用することで、より高性能なタイヤの開発につなげていくとしている。

同社は、従来からタイヤの基本性能および性能持続性に大きく関与する硫黄について研究してきた。タイヤ研究で培った知見は他の分野にも応用しており、硫黄においては、2011年から産業技術総合研究所と共同で、リチウム硫黄電池に関する開発を進めてきた。

リチウム硫黄電池は、リチウムイオン電池の6~7倍の理論容量が期待でき、軽量かつ安全性に優れているが、充放電のサイクル寿命が課題になっている。サイクル寿命を向上させるには硫黄化合物を高精度で計測する必要がある。そこで本研究グループは、X線の波が揃っているテンダーX線を利用できる、SPring-8を活用することで、テンダーX線ナノスコープを初めて確立した。この計測技術により、硫黄化合物をナノレベルで可視化することに成功した。

今後、この計測技術を2024年から運用開始予定である次世代放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」でも活用し、リチウム硫黄電池の動作環境下での計測および材料開発の早期実用化に取り組んでいくとの事。また、タイヤ研究において、ゴムと硫黄が結合した架橋構造のさらなる分析への応用が期待できるという。このことから、同社が掲げるタイヤ開発および周辺サービス展開のコンセプト「SMART TYRE CONCEPT」の主要技術のひとつである「性能持続技術」の開発につなげていくとしている。